「私有都市についての3つのエッセイ」by Mark Lutter
1. 導入
私有都市とは民間営利企業によって所有され、置かれている国から法的に自律しており、所有者によってルールが作られる都市。
(刑法は除く)
ヤーヴィン「アメリカで革命、レジームチェンジを起こす!!」と違って、「発展途上国におけるセカンドベストの策だね」くらいのノリなのが対照的。
2. 私有都市ではどのような政策が行われるか。
誰もいない場所から始めることを想定しているため、誘致が重要。
最初は、exit (嫌なら出ていく) よりも、entrance (魅力を出して入ってくる人を増やす) のほうが大事。
私有都市は残余請求者であり、死荷重があると税収が下がることにつながるので、私有都市は効率的な政策 (地価税、ピグー税) を行うとしている。本当?
この残余請求者っていうのは、政府の残余請求者じゃなくて地域の残余請求者みたいな概念を指してるの?
理論的な話はあんまなくて、実証的な話がいっぱい。
誘致、経済成長に役立つ政策の一覧。
主に、発展途上国に導入することを考えているらしい。
汚職が多いところで、現状よりはマシということで導入する。
(現状よりマシな案が私有都市しかないなら、それを導入すればいいけど、他にも案があるなら、それと比較しなきゃいけないよね。「現状よりマシ」という議論で決着するという感じなのは、飛躍を感じた。)
3. 私有都市について洞察が得られる既存のシステム
私有都市は、一定の地域で独占だが、引っ越しという形で競争が働く、という意味で民営の水道、電気会社に近いインセンティブを持つと考えられる。
発展途上国の水道において、Public-Private Partnershipが良い成績を収めているので、私有都市も成功するだろう、という議論。
しかし、私有都市は、Public-Private Partnershipとは違うので、決定的な証拠ではない
Public-Private Partnershipでは、企業が独占力を乱用しないように、政府が見張っている。
じゃあ、違うじゃん
ayu-mushi.iconやっぱり、Seasteading (海上国家) の「海の上だから家ごと移動して引っ越しできる」って方がいいんじゃない?
また、企業城下街にも近い。企業城下街において、独占力を利用し、価格を釣り上げるのかという問い。
そうだとする研究と、そうでないとする研究がある。
著者は、企業城下街の事例は、私有都市が独占力を乱用することの、よわめの証拠を与えると言っている。
チャーターシティの提唱者、ポール・ローマーは民間によるチャーターシティには反対した。
彼いわく、大学でスポーツで活躍している有名な男子学生が、女子学生に性犯罪をしたと訴えた場合、大学側は加害者側に甘くなる。
(大学は営利企業ではないけれど) それと同様、民間で運営した場合、法による平等な保護が守られないのでは?
という批判。
そこで、著者は民間による仲裁 (arbitration) の例から調べてみた。
雇用契約を民間に仲裁させる場合、雇用者側に有利にするのか?
多数の研究は、仲裁はフェアであるとしている。例外もある。
海外との契約は、もともと民間が仲裁によって行っていた。
その後、政府が契約違反を裁くNew York Conventionが導入されると、取引が15%から38%に上がる。
つまり、全体の39% (vs.61%) が民間の仲裁だけによって成り立っていたということか。
AmazonやEbayも、買い手と売り手の仲裁をしてたり。
民間警察。San Francisco Patrol Special Policeというのが民間警察の例。
また、Starrett Cityというアパート地区では民間の警備が行われており、周囲より治安がいい。
この辺の例から、ジョージ・メイソン大の学生らしさを感じる (Peter LeesonやEdward Stringhamの研究が引かれてる)。
4. 制度の経済学の観点から
マンサー・オルソンによれば、政策について、政策がある場合とない場合とで1人あたりの利益の違いが大きい人々のほうがの勝ちやすい。私有都市は、運営会社に大きな利益があるため、この理屈からすると成功しやすいと考えられる。
ウォルトディズニーワールドも、ロビー活動の結果、一定の自治権が認められてる。夢の国は、新反動ランド。
道路、上下水、航空など、ディズニー社によってコントロールされてる。